2010.03.05

Chile

 雪が降りそうな寒い7月のある日、それは前触れなく訪れた。
最初は「おふざけが過ぎた」のかと思った。
リビング全体、いや、マンション全体が揺れていた。ビデオ再生中のテレビの前、歌のお姉さんと一緒に飛び跳ねていたけれど、どうもピョンピョンしすぎたらしい。
 跳ねすぎた?と聞こうとソファに座っているはずの母を振り返ったら、母はわたしではなくあらぬ方向を見て、あら地震、と呟いた。

「ジスィン?ぐらぐらしてること?」

 聞いたことのない言葉を舌足らずに復唱してフラフラと母の元に駆け寄る。こうやって地面がぐらぐら揺れるのが地震、と母は教えてくれたが、地面が揺れるということが分からない。わたしが立っているのはマンションの上の方の階で、幼稚園やお買い物に行く時の地面じゃない。なんでマンションが揺れているんだろう。
 やがて、地震はフェードアウトするようにおさまった。
 ジスィンとマンションのぐらぐらとの繋がりが想像できないわたしは、咄嗟にぐらぐらする地面に立ったきつねとたぬきがマンションを一緒にぐらぐら揺らしている場面を想像した。ぐらぐらしている下の方に合わせてマンションを押しているから揺れたんだ。そうに違いない。
「きつねさんとたぬきさんが揺らしてたんだね!」
 母にそう言うと、訳がわからないという顔をされながら、そうかもね、と肯定されたので、そうなのだと強く確信した。母は娘の誤解に気付かずに、ジスィンではなくてジシンと発音を直し始めた。
 母には申し訳ないが発音も、誤解もしばらく直らなかった。生まれた国では7月が夏であり、暑いということが説明されてもわからなかったように、変だと気付くにはまだ幼すぎたのだった。外では雪が舞い始めていた。

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私の地震初体験はチリでした。
住んでいたのはサンティエゴに一年半くらいですが、それでも数回は地震を体験しました。自宅が高層マンションの上層だった記憶があるので、震度3くらいあったのかも。

チリ巨大地震で、とりあえず国全体がパニックになっていないのは、南米の地震大国だからというのも大きいと思います。
ただ、貧富の差が日本よりあるのは事実。
津波被害が半分と聞きますが、死者800人以上は、結構な数です。
ハイチの時と違って、救出作業が活発でないように見えるから、まだ増えるかも知れません。
治安の悪化も心配です。基本的には良い人たちが多いのだけど。

今はチリとの繋がりがないですが、物心ついたのが彼の国なのでとても気になります。
チリはこれから秋、冬に向かう季節。寒さがやってくる前になんとか復興の目処がつくことを祈ってやみません。
南北に細長い国だけれど、記憶では雪も降って積っていたし、結構な寒さのはず。
ハイチよりも平気じゃない、なんて言わず、日本の人たちにも関心は持っておいていただけたらな、と思います。